蜂の子とは、その名の通り、蜂の子ども、つまり蜂の幼虫や蛹のことです。
ミツバチだけではなく、スズメバチ、クロスズメバチ、アシナガバチ、クマバチなどの蜂の幼虫や蛹も、すべて“蜂の子”と呼ばれています。
特にミツバチに言及すると、女王蜂や働き蜂といったメス蜂は、ローヤルゼリーや蜂蜜など、人の役に立つミツバチ産品の生産者として重要な役割を担うため、主にオス蜂の幼虫が蜂の子として用いられています。
私たち人類との関わりにおいて、蜂の子は蜂蜜と同様に長い歴史を持ちます。
昆虫を食べることに対して、現代の多くの人々は少し抵抗を感じるかもしれません。
しかし昆虫食は世界的に見ても珍しいものではなく、蜂の子も古来よりルーマニア、タイ、メキシコ、エクアドルなど多くの国で貴重なたんぱく質等の栄養源として食されてきました。
最古の歴史としては、150 万年前に東アフリカで食べられていたという記録があります。
現在でも特にタイでは一般的な食材で、一流ホテルのメニューにもなっています。
日本では 1919 年に、昆虫食に関する大規模な調査が行われ、主にスズメバチの幼虫が、全国的に食用として用いられている実態が明らかとなりました。
例えば埼玉県では、炭火で焙ったものに醤油や味噌をつけて食べ、岡山県では生のまま、あるいは醤油で付け焼きや煮付けにして食べ、鹿児島県では鍋で煮込んで食べていたそうです。
また太平洋戦争中、蜂の子は、北海道から九州に至る各地の昆虫食の中で、最も頻繁に利用されていたとの報告もあります。
蜂の子は、古くから薬としても使用されてきました。
ルーマニアにおいても、蜂の子は、健康食品の一つとされ、アピセラピーにおいて利用されています。
その他、30 カ国以上の国々における数百名の医師、生化学者、薬剤師の臨床での経験や研究報告に基づいてまとめられた文献では、蜂の子は、病後の回復、くる病、倦怠、神経衰弱、心臓疾患、腎臓疾患、精力減退に関連する治療において効果が高いとされ、これらの改善例が世界中に見られることを示しています。
このように蜂の子は、さまざまな可能性を秘めた薬として、世界各地で使われてきたのです。
現代の科学研究においては、蜂の子の良さについて、どのような事柄が明らかになっているのでしょうか。まずは栄養学の視点から、蜂の子の食品としての有用性を裏付ける結果が得られています。
ミツバチの蜂の子の栄養成分を分析したところ、たんぱく質、脂肪、および炭水化物を豊富に含み、加えて、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、さらに、ヒトの体内で合成できない等のために、食事から栄養分として取り込まなければならない必須アミノ酸が含まれることが明らかになりました。
蜂の子は、さまざまな栄養素を豊富に含む優れた食品と言えるのです。
さらに、蜂の子に豊富に含まれるたんぱく質を摂取しやすいように、酵素によってペプチドやアミノ酸に分解した“酵素分解蜂の子”の研究も進められています。
近年、最新の科学研究によって、蜂の子のさまざまな作用も明らかになっています。
たとえば、蜂の子に最も期待される効能である“耳鳴り”や“耳のきこえ”への作用。岐阜大学医学部附属病院 青木光広 臨床准教授のグループは、耳鳴りを伴う難聴患者を対象としたヒト試験を行い、“酵素分解蜂の子”を長期間摂取することによって、耳鳴りによる不安や憂鬱感といった抑うつ症状および聴こえにくさが改善されることを明らかにしました。
また、他の研究グループが行ったヒト試験においても、試験に参加した人の約7割が、蜂の子粉末の摂取による耳鳴りの改善を実感したと報告されています。
その他、20〜30代の女性を対象とした研究では、蜂の子配合食品の摂取試験によって、蜂の子による肌の張りや弾力を改善する効果が示されています。
蜂の子は、蜂蜜やローヤルゼリー、プロポリスといったミツバチ産品に比べると、馴染みが薄いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、長い間、世界中で愛された歴史があり、また、さまざまな可能性を秘めた食品です。